複数のWi-Fiで接続が切り替わらないのはナゼ?
ローミングの仕組みと対策を解説

なぜWi-Fi接続がスムーズに切り替わらないのか?
Wi-Fiネットワークが複数のアクセスポイントで構成されている場合、本来であれば端末が近くのアクセスポイントに自動的に切り替わる「ローミング」が行われるはずです。
しかし、実際には切り替えがスムーズに行われず、電波が弱くなっても元のアクセスポイントに接続されたままになることがあります。この問題が起こる背景には、複数の要因が絡み合っています。以下では、その原因を4つの観点から解説します。
もしもWi-Fiが繋がらないなどのトラブルでお困りの方はこちらの記事も併せてご覧ください。
端末側のローミング判断の仕組み
Wi-Fiローミングがスムーズに進まない理由の1つに、端末側のローミング判断基準があります。多くの端末は、現在接続されているアクセスポイントの信号強度が非常に弱くならない限り、新しいアクセスポイントに切り替えを行いません。この基準は、接続の安定性を確保する目的ですが、結果として信号強度が低いアクセスポイントに留まり続ける原因となります。
また、端末メーカーによりローミングの仕様や設定が異なるため、パソコンやスマートフォンなど異なるデバイスで挙動の差が生じることもあります。
アクセスポイント間の通信速度と距離の影響
アクセスポイント間が離れすぎている場合や、物理的な障害物が多い環境では、Wi-Fiのローミングがうまく機能せず接続切れや速度低下が発生しやすくなります。
メッシュWi-Fiのように複数のアクセスポイントで広範囲をカバーする方法が効果的ですが、アクセスポイント間の通信速度や配置が最適化されていないと、電波が重複しない部分が生じることもあります。
その結果、端末が適切なアクセスポイントに切り替わらない問題が引き起こされる可能性があります。
RSSI値と実際の接続切り替わりの遅れ
RSSI(Received Signal Strength Indicator)とは、端末が受け取るWi-Fi信号の強度を示す値のことです。RSSI値が低下すると、端末は新しいアクセスポイントへの切り替えを検討しますが、この処理には遅れが生じることがあります。
その原因は、使用している端末の性能やアクセスポイント同士の設定にあります。たとえば、端末がRSSI値を低いと判断しても、適切なアクセスポイントが認識されるまで一定の時間がかかる場合があります。この遅れが切り替わりの障害となり、ネットワーク接続の不安定さを招く要因となっています。
端末の設定やソフトウェアの影響
端末側の設定やソフトウェアも、Wi-Fiローミングに影響を与える重要な要素です。一部の端末では、ローミングの感度を調節する「ローミングアグレッシブネス」という項目が存在し、この値が低い場合はアクセスポイント切り替えが遅れる可能性があります。
また、古いソフトウェアやファームウェアでは最新の高速ローミングプロトコル(802.11k/v/r)に対応していないこともあり、快適なローミングが実現できない場合があります。
この問題を解決するには、端末の設定を見直すとともに、最新のソフトウェアやファームウェアへのアップデートを定期的に行うことが効果的です。
Wi-Fiローミングとは?その基本を解説
ローミングの役割

Wi-Fiローミングの役割は、異なるWi-Fiアクセスポイント間で接続を自動的に切り替えることです。この機能により、ネットワークを利用する端末が移動中でも通信が途切れることなく、スムーズに利用を続けられるようになります。
例えば、1階から2階へ移動した際に近くのアクセスポイントへ接続を切り替えることで、安定した通信を確保することが可能です。
ローミングは、特にメッシュWi-Fi環境でその効果を発揮します。メッシュWi-Fiは、親機とサテライト(子機)で構成され、会社全体や広い施設で統一されたネットワーク環境を構築することができます。この仕組みでは同じSSID(Wi-Fiのネットワーク名)とパスワードを利用するため、ユーザーが意識することなく自動的に最適なアクセスポイントへ切り替えることができます。
Wi-Fiアクセスポイント間の接続切り替え
Wi-Fiローミングが実現する鍵は、アクセスポイント間のシームレスな接続切り替えの仕組みにあります。通常、Wi-Fi端末は電波強度(RSSI値)をもとに最適と判断されるアクセスポイントへの切り替えを試みます。ただし、端末がどのタイミングで切り替えるか(ローミングを実行するか)は、端末側の設定やソフトウェアの仕様にも依存します。
また、切り替え時の通信品質も重要です。異なるアクセスポイント間での通信速度や距離の差がある場合、切り替えが遅れたり、途切れたりすることがあります。このため、ローミングを安定化するためには、アクセスポイント間で適切な配置とチャンネル設計を行うことが必要です。
ローミングのメリットと課題
ローミングのメリットは、安定したネットワーク接続を維持しながら移動が可能になることです。これにより、パソコンやスマートフォンを使った作業中に動画視聴やオンラインミーティングが途中で切れる心配が少なくなります。また、複数のアクセスポイントを設置することで、より広範囲で快適にWi-Fiを利用できるという利点もあります。
一方で、ローミングにはいくつかの課題もあります。例えば、アクセスポイント間の距離や電波の干渉が原因で通信品質が低下する可能性があります。
また、端末が電波の強さや信号の安定性を判断するタイミングにより、最適なアクセスポイントへの切り替えが遅れることもあります。そのため、802.11k/v/rといった高速ローミングプロトコルや、低RSSI切断機能の活用が課題解決の鍵となります。
さらに、ローミングの効果を最大限に引き出すためには、古い機器から最新のWi-Fi対応機器へのアップグレードや適切なネットワーク設計が重要です。
Wi-Fiローミングを改善するための具体的な技術と設定
高速ローミングプロトコル(802.11k/v/r)の活用

Wi-Fiローミングの切り替えをスムーズにするためには、高速ローミングプロトコルである「802.11k」「802.11v」「802.11r」を適切に活用することが重要です。これらのプロトコルは、端末がアクセスポイントを切り替える際に発生する待機時間を短縮する仕組みです。
例えば、802.11kは周辺のアクセスポイントの情報を端末に提供することで、最適な接続先を迅速に選択できるようにします。802.11vは接続中のアクセスポイントの推奨情報を提供し、これにより効率的なローミングが可能となります。そして802.11rではローミングにおける認証プロセスを短縮し、シームレスな切り替えを実現します。
これらの高速ローミングプロトコルは、特にメッシュWi-Fi環境や複数のアクセスポイントを使用するネットワーク環境で大きな効果を発揮します。機能が対応しているWi-Fi機器を使用することが前提となるため、事前に対応状況を確認することが必要です。
電波状況の最適化とチャンネル設計
Wi-Fiのローミングを改善するためには、アクセスポイント間での電波干渉を最小限に抑える設計が不可欠です。複数のアクセスポイントを設置する際は、異なるチャンネルを設定し、干渉を防ぐことが重要です。例えば、2.4GHz帯では1、6、11チャンネルを使い分けるのが一般的です。
また、アクセスポイントの配置や電波強度も重要な要素です。電波が最適にカバーするよう、階層や部屋の間取りに合わせて配置を調整しましょう。必要に応じてメッシュWi-Fiシステムを導入することで、アクセスポイント間の切り替えを自動化し、途切れることなく快適なネットワーク環境を提供できます。
さらに、電波状況を測定するためのツールを活用するのも効果的です。専用のアプリやソフトウェアを利用して電波強度や干渉を診断し、問題がある箇所を特定することが可能です。
低RSSI切断機能の導入
ローミングの品質を向上させるために、「低RSSI切断機能」を導入するのも一つの方法です。この機能では、端末がアクセスポイントからの電波強度(RSSI値)が一定以下になると、自動的に切断し、より強い電波のアクセスポイントに接続し直す仕組みです。
通常、端末は弱い電波を掴んだまま離れたアクセスポイントに接続を維持しようとするため、通信速度が低下してしまう場合があります。しかし、低RSSI切断機能を利用することでこの問題を軽減でき、結果としてローミング時のネットワーク品質が向上します。
設定はWi-Fi機器の管理画面から調整できることが多く、最適なRSSI値のしきい値を設定することが必要です。ただし、しきい値が高すぎると頻繁な接続切り替えが発生する可能性もあるため、慎重に調整することをおすすめします。
最新のWi-Fi機器へのアップグレード
Wi-Fiのローミング環境を根本的に改善するためには、最新のWi-Fi機器へのアップグレードも有効なアプローチです。特にWi-Fi 6やWi-Fi 6E対応機器は、ローミング性能が強化されており、複数のアクセスポイント間で高速かつ安定した接続を提供します。
メッシュWi-Fiシステムを採用している最新機器では、親機と子機の間で自動的に電波の最適化が行われるため、ユーザーが意識することなく良好なネットワーク環境を維持できます。また、多数の端末が同時接続する状況下でも、それぞれの端末が最適なアクセスパスを選択できる仕組みが整っています。
新しいWi-Fi機器は、省エネ性能やセキュリティも向上しており、長期的なコストパフォーマンスも魅力です。特にパソコンやスマートフォンなど、最新技術に対応した端末が増える中、オフィスのネットワーク環境全体をアップグレードすることが推奨されます。
まとめ
Wi-Fiローミングは、オフィスや大きな施設で複数のアクセスポイントを使用してネットワークを構築する際に重要な技術です。
しかし、「Wi-Fiの切り替えがスムーズにいかない」「接続が途切れてしまう」といった問題が発生することもあります。これらの課題を改善するためには、メッシュWi-Fiの導入や高速ローミングプロトコル(802.11k/v/r)の活用、電波干渉を防ぐための適切なチャンネル設計など、正しい設定・対策が求められます。
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